“Ki is the wisdom of mankind which has existed for 5,000 years.”

 

 氣は五千年前からある人類の知恵

 

サンフランシスコで行われた世界気功会議は、科学に発展につれて人類が忘れ置き去りにしてきた”気による癒し”を

もう一度思い起こそうというものだった。 

  

 世界の気功家が集合   

病気の部分を果物の腐ったナイフでえぐり取るように西洋医学の治療の考え方とすると、東洋の医学では体全体をエネルギーの循環する一つの宇宙と考え、その流れのよどみや希薄な部分を整えることが治療であると考える。 

エネルギーは5千年来の中国流で言えば気である。気が程良い勢いでまんべんなく回っていれば健康なわけだ。

 気功はこの中庸のとれた気の流れを維持し、心も体も健康にしておくための5千年の伝統を持つ人類の知恵といってもいい。 

難しい理論もなく器具もいらない。高価な薬品も使わない。それで治癒力を持てる気功は、常識で考えれば手品師か超能力かペテン師のようにしか見えない。

特に19世紀以降の科学万能の時代には、こうした証明のできない非科学的な治療法や民間療法は過去のもの迷信とさえされてきた。本場の中語でも文科大革命によって根こそぎにされた。

今も伝えられているとしても、細々とした民間療法としてである。 それが、見直されるようになった。

正式に医療として認められるまでにはなっていないが、少なくとも医学の分野の医師、研究者学生看護婦の間で急に注目される様になった。

細々と市井で孤独に伝統を受け継いでいる気功家に頼る病人も増えている。

 複雑ではっきりとなずけようのない病気や慢性病が多くなり、決め手となる薬や治療法がなかったり、病人が非人間的なハイテク治療機器に不安を抱いたり、気功見直しの原因はいろいろと考えられる。

 第二回世界気功会議が第一回全米気功会議としてサンフランシスコで開催された11月21日からの1週間は、西欧医学で気功への熱いまなざしが急激に燃えた時期でもあった。 

「気功週間」と、ブラウン市長によって宣言されたサンフランシスコの町のあちこちには「Quigong Week」の幟がはためいていた。

 会議はホテルのフロアを2つ借りきって行われた。 

集まったのは、米国、カナダ、台湾、日本、マレーシア、インドなどのアジア諸国、ドイツ、スイス、オーストリアから西洋医学、中国伝統呪術、太極拳、格闘技、科学、物理学、仏教そのほか様々な背景をもった気功に専門家100人。受講者は さらにその何倍かいた。

この人たちのほとんどもまた、ヒーラー、ソシアルワーカー、学生、芸術家などである。

気による独自の治療法を開発し癌、白血病、事故による脳障害、麻痺など現代医学で難病とされている様々な分野で実績を積んでいる新倉勝美氏も、この会議に講師として招待され、門下生25人と「気=愛」「気と心」をテーマに、強烈なパワーとその治癒力を公表することになっていた。 


 

 呼吸と瞑想で気作り    

 連日同時多発的にワークショウップが開かれた。すべてのクラスを取ることは不可能なので、この機会に気功のすべてを学びたいと思っていた参加者は、選択を迫られて必死にれパンフレットを読んでいる。

 少しずつクラスをのぞいた限りでは、動作を取り入れて実際に気を体内で作り出す方法を教えるのと、気の発生を図式などで説明するのと2通 りのクラスに大別されるようだった。

「ほの暗い明かりの中で、ゆっくりと上下させる両腕。そこに大きな球を抱くようにイメージして・・・」 光沢のある絹の中国服を着た講師が、通訳を通してそう言うと数十人が同じように腕を上げ、目を閉じ神秘的な表情をして丸い空気の球を抱く。

はばかるような静かな呼吸。世界がとてもデリケートで、見えないものが見えてくるような気がする。

「外の大きな宇宙と中の小さな宇宙がつながり大きな宇宙と一体となって永遠の命の流れの中に呑み込まれる。」

 エゴのつっぱりで偏っていたバランスも、こうして正常になり病気も癒えるエネルギーが強まってビジネスにも社交にも成功する。老化がなくなる 。

 あるいは、「宇宙は相反する二つの要素で成り立っています。つまり陰と陽です。陰陽はけして同化せず正反対の方向に よじれる運動をします。縄のようによじれたその中央にできる”無”の領域。そのブラックホールのような部分から気が生まれます。」

 スクリーンに映し出された大きな円。白と黒の対照的な領域が曲線で描かれている。 その中央の小さなスポットが問題の気の発生の場所であるという。 この理論でエネルギーの様々な問題が解けるだろう。

電気のプラスとマイナスの衝突による雷。ショートするのは気の発生なのだろうか。雲や風や、自然界の様々な動きエネルギーの移動。 
  「生体のエネルギーもこのようにして生まれています。ストレスもエネルギーの調整で解消されます。」

”音や光によって、超越的な魂と純粋なエネルギーを備えた永遠の肉体を生み出す。”という、密教的な気功もあった。

 幸せな性的関係、ビジネスで成功する脳力など人間関係で力を発揮する気、糖尿病や喘息などの慢性病を治す食物の気を取り入れる方法、癌や心臓病を治す気など、様々な気が紹介されていたが、基本は共通 して呼吸と姿勢、動き方にあるように思えた。  
 

 

治療のみに挑む新倉式気    

 時には針の落ちる音も聞こえるほどの静寂の中で瞑想し、時には屋上にかけ上って思い切り声を出す。

そうしながら様々な気を作って外側宇宙の気と通 い合い大きなエネルギーを得る。

 様々な気を作って外側の宇宙の気と通い合い、大きなエネルギーを得る。

 

新倉氏のワークショップは一番大きなホールで開催されていた。

揃いのオレンジ色のTシャツを着た門下生たちが、参加者と混じって大きな輪を作り、新倉氏の指導で気を作るトレーニングを始める。

門下生のひとりの腹筋を気によって硬直させ、両側から支えられたその体の上に自分が乗ってみせるというデモンストレーションを開会式で行ったためか、新倉氏のクラスには気合いの入った参加者が多く皆積極的にアクションに加わってくる。

 独自の呼吸法で作った気をお互いに送り会うペアの動作では、初めて気に圧される体験をして驚く人が続出する。

200ポンドの門下生を、小柄な新倉氏が一指も触れずに気合いだけで吹き飛ばすと、会場に「おっ」という感嘆の声がわき起こった。

 こうしてみると、新倉氏の気は多くの気功による気作りとはずいぶん違っていることがわかる。

 ほとんどが静かな瞑想により、自分の心身に気を充実させ、そのエネルギーで宇宙とつながっていくのに対し、新倉氏は、既に体内に蓄えてある気を吐きだし、そのエネルギーによって人間の部分、あるいは内部を動かす。そしてその力で、病気の部分に作用していくのだということが分かる。

 新倉氏のように、格闘技でエネルギーの蓄え型を身につけていなければ病気を治すほどの気は出せないのではないかと誰でも思うのだが、新倉氏はそれを打ち消した。 

 「気を作るための特別な呼吸法を、私は自分で作ったんです。呼吸をしている人なら誰でもできる簡単な方法です。ただ、これによって生まれる気の力は、使わなければ強まりません。

何とかして病気で苦しむ人を何とかして助けてあげたいという一心で出す気は、大男を10人くらい吹き飛ばすほど強まるのです。

赤ちゃんがお乳を吸えば吸うほど、お母さんのお乳がでるのと同じです。」 

”気=愛”、 ”気と心”という、新倉氏のワークショップのタイトルが、新倉氏の病気との対決の姿勢を良く表していた。

 気を病人の体に入れる方法が、新倉氏の絶え間ない研究の課題である。

掌、膝、肘、木の棒、毛髪、鏡による反射、電話、紙など、これまですでに一万種類以上の方法が編み出され、実行されている。 

「いつもお医者さんに遠慮して、許される範囲でやってきましたが、最近は、コロンビア大学のプレスビテリアン病院だの、オハイオ大学の医学部の教授や研究者の方も、私の気による治癒力を積極的に研究してくださっています。」

 最新のハイテク医療も一目置く愛の治療。

この気功会議のハイライトである「イヤー・オブ・ザ・チゴン1997」受賞パーティで、新倉は”アナザー・カルチャー”部門で受賞した。

 イヤー・オブ・ザ・チゴンは、精悍な青年気功家キュー・キット・ワン氏(マレーシア)、学術研究部門では、長寿と美容のリーダー、フェン女史(中国)が受賞した。  

 

 

  世界よ、気功を思い出せ    

 

 気功会議を知ったクリントン大統領からも激励の手紙を受け取ったオーガナイザーのポイ・エウ・チャウ博士は、自らも気功に造形の深いヒーラーである。

 カナダの病院でナースをしていた時に、父親から中国五千年の歴史を持つ東洋医学、特に漢方薬と気功を教えられた

体と心と精神とを同時に癒すことのできる東洋医学にひかれて、1997年カリフォルニアにわたり、鍼のらライセンスを取得した。

しかしそれよりも、鍼と違って誰にでも教えられ、誰でも使える気功を広めたいと思うようになり、世界気功会議の開催を企画した。

次回は来年1999年4月に、やはりサンフランシスコで開催される。

 「これは現代の奇跡だと、気功の力を知った人は皆驚きます。でもこれは五千年前の人間の知恵なのです。私たちはただ、忘れていただけなのです。」  

がん、ぜんそく、糖尿病などを、気功で克服した人たちが彼女の右腕となって、会議の山のような事務仕事をこなしている。 

「新倉先生は、ご自分の気は気功とは違うとおっしゃいますが、彼の気は、私には最もすぐれた気功のように思えます。気で病を癒す心は、気功の場合も、彼の言葉通り愛で満ちているのですから。しかし、彼の気持ちを受け入れて”別 の文化”から生まれた気功というふうにしました。」 

 しかし、自分を癒す気を自分の中に作る気功と、ひたすら病人の回復に専念する新倉氏の気の差は、この会議でくっきりと目立っていた。

ともかく、コストがかからず、環境に順応した新しいヒーリングエネルギー「気」への熱い期待は、この会議の結果 、全世界でますます高まった。これだけは事実だ。21世紀に向けて最も希望に満ちた贈り物となるだろう。